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 『監査役』とは

145643:監査役
{{Law}}
監査役かんさやく)は、日本の株式会社において、取締役及び会計参与の業務を監査する機関である(会社法第381条1項)。株主総会取締役(または取締役会)と並ぶ株式会社の機関の一つで、会社経営の業務監査および会計監査によって、違法または著しく不当な職務執行行為がないかどうかを調べ、それがあれば阻止・是正するのが職務である。また、会社と取締役の間での訴訟においては取締役に代わって会社を代表する役目も担う(会社法第386条)。法改正や判決例によってその権限には変遷がある(後述)。日本の監査役は比較法的に見て大変に珍しい制度である{{要出典}}。

監査役の起源・理論

監査役の必要性

株式会社の業務監査をどのように行うか(またはどのような立場の人間が担うか)についてはさまざまな制度設計が考えられる。もっとも原始的な監査制度としては、出資者であり会社の所有者である株主自身がそれにあたることが考えられるが、所有と経営の分離という現象を踏まえると、株主に多くを要求することは適切ではない。次に、業務の執行にあたる取締役同士の相互監視(取締役会制度や旧共同代表取締役制度)によることが考えられるが、業務執行の効率性を損なったり仲間意識のため必ずしも有効に機能するとは言いがたい。そこで、第三者的立場から、会社の業務執行を監査する立場の役割を担う機関(監査役)が必要とされることとなる。

世界的な趨勢

株式会社においてどのような機関構造をとるべきか、という問題は、監査制度をどのように構築すべきか、という問題と重なり合うものである。世界的な潮流としては、取締役会による監査のみの法制(アメリカ等、一元性監査)、取締役会だけでなく監査役会制度による監査も併用する法制(ドイツ等、二元性監査)とがあるとされる。中にはフランスのように、一元性監査制度と二元性監査制度の2種類の機関構造を選択できる法制も存在する。日本においては、従来は監査役制度による二元性監査制度のみであったが、委員会等設置会社制度(当時)の導入によりアメリカ型の一元性監査制度をとることも選択可能になった。さらに、会社法ではより柔軟な機関構造を選択できるようにもなったので、非公開会社などでは監査役を設置せずに一元性監査制度をとることもできる。ただし、従来一元性監査とされた法制においても、一部の取締役により構成される監査委員会が設置されるなど、実質は二元性監査制度に移行しつつあると言われる。

日本

日本の監査役の変遷

監査役は明治23年に制定された商法(いわゆる旧商法)により設置された。以後企業不祥事発覚と連動して、権限や地位に関しての改正や立法が重ねられ、現在に至っている。特に1950年(昭和25年)改正、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(商法特例法)制定、会社法制定において監査役制度に大きな変更が加えられてきている。

旧商法から昭和25年改正以前

昭和25年改正から平成17年改正前まで

会社法制定以降

小括

以上のように日本の監査役は、昭和25年改正を境にその性質を大きく変えている。昭和25年改正以前の監査役は経営監督をその主任務としていたが、昭和25年改正以降は、経営監督は取締役会による自己監査が原則となり、それを前提に監査役の職務は会計監査が基本となった{{要出典}}。また、昭和25年改正以後の度重なる権限強化・地位強化(独立性の確保)は山陽特殊製鋼不二サッシによる粉飾決算またはKDDロッキードによる贈収賄などの企業不祥事に対応してなされている{{要出典}}。

旧商法においては、委員会等設置会社以外の株式会社においては監査役を必ず置くことになっている一方、有限会社法(現在廃止)上の有限会社では監査役をおくことは強制されていなかった。しかし、会社法制定にあたり株式会社に旧有限会社を吸収して、機関設計を自由化したために、監査役のあり方が大きく変更されている。

監査役の人数等

人数

監査役の設置は原則として任意であるため、会社に存在しなくてもよい(326条2項)。ただし、取締役会設置会社委員会設置会社公開会社ではない会計参与設置会社を除く)と会計監査人設置会社委員会設置会社を除く)には設置しなければならない(327条2項3項)。それ以外の会社は、定款の定めによって任意に設置することができる(326条2項)が、委員会設置会社では取締役会内に設置される監査委員会及び会計監査人による監査を前提としているので、監査役を設置することができない(327条4項)。

設置した場合の人数には原則として制限はないので、1人以上いればよい。しかし、監査役会設置会社(委員会設置会社以外の公開会社である大会社においては監査役会設置義務328条1項)には3人以上おくことが必要であり、うち半数以上が社外監査役でなくてはならない(335条3項)。

また、、監査役会設置会社においては、常勤監査役を選定しなければならない(390条2項2号、同3項)。常勤監査役とは、他に常勤の仕事がなく、会社の営業時間中原則としてその会社の監査役の職務に専念する者である。常勤監査役は、一般的には二社以上の常勤監査役を兼務することはできない。しかし、親子会社間においては認められる余地がある(なお、常勤性違反は選任無効ではなく、監査役の善管注意義務違反となる)。常勤の社外監査役が許されるかについては、言葉的には違和感があるが、社外監査役の定義が使用人でなかったことというものであるため認められる。

なお、監査役が死亡等により欠けた場合に備えて、補欠監査役を予め定めることも可能である(329条2項)。

資格

監査役の資格については、取締役と同様の会社の機関であることから、取締役と同様の制限がある。法人成年被後見人被保佐人、会社法等の法令違反を犯した者などは監査役になることはできない(335条1項、331条1項)。また、非公開会社においては、定款で監査役を株主に限定することができる(公開会社では許されない。335条1項、331条2項)。

さらに、監査役の独立性を確保するため、監査役は当該株式会社の取締役や使用人、子会社の取締役・執行役・会計参与(会計参与が法人の場合の社員含む)・使用人を兼任することができない(335条2項)。

このほか、社外監査役については、過去に当該株式会社及び子会社の取締役・執行役・会計参与(会計参与が法人の場合の社員含む)・使用人でないことが必要である(2条16号)。

任期

監査役の任期は、原則として4年(正確には、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで)である(336条1項)。

ただし、非公開会社である株式会社については、定款で10年まで伸長することができる(336条2項)。

また、補欠監査役については、定款により前任者の任期までとすることができる(336条3項)。

さらに、定款変更により、監査役を置かないこととする場合、委員会設置会社への変更を行う場合、監査範囲を会計監査に限定していた場合に、その範囲を業務監査に広げる場合、公開会社に変更する場合にも、任期は満了する(336条4項)。

報酬・費用

定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定める(387条)。

費用等の請求(388条)。

監査役の選任・解任

選任

監査役は株主総会の普通決議によって選任される(329条1項、341条)。ただし、取締役が、監査役がある場合に、監査役の選任に関する議案を株主総会に提出する場合には、監査役(監査役が2人以上ある場合はその過半数)、監査役会設置会社においては監査役会の同意を得る必要がある(343条1項、同条3項)。

また、前述の補欠監査役が予め選任されている場合は、監査役が欠けた時に補欠監査役が監査役に就任する。

監査役、又は監査役を辞任した者は、株主総会において、監査役の選任若しくは解任又は辞任について意見を述べることができる(345条1項、4項)。

退任

監査役が退任するのは、原則として前述の任期満了のときである。

期間満了のほかにも、監査役が辞任の意思表示をした場合(330条民法第651条1項準用)や、委任契約の終了事由である監査役の死亡破産手続開始決定、後見開始の審判、会社の破産手続開始決定により退任することとなる(330条・民法第653条準用)。

さらに、任期途中であっても、監査役は株主総会特別決議によって解任される(339条1項、309条2項7号)。

職務と権限

監査役は取締役の職務執行を監査するが、何を、どのような手段で監査するのであろうか。以降、断りのない限り一般的な株式会社の監査役についてみていく。

監査の対象

監査役は会社の会計監査を含む業務監査を行う(381条1項)。しかし、争いはあるがその権限は適法性監査にとどまり、妥当性監査には及ばないと考えられている。つまり、取締役の職務執行行為が違法であったり、また著しく不当である場合には取締役の善管注意義務違反(330条、民法644条)として法令違反となる可能性があることから監査の対象となるが、その行為が妥当かどうかは取締役の裁量の問題(経営判断)であって、経営者ではない監査役は介入すべきではないというのである会社法(第九版)神田秀樹著 204頁脚注*1)参照
普段から会社の業務について熟知していない者が業務内容の妥当性を監査できるわけもない、ともいえる{{要出典}}。

子会社に対しても、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の事業の報告を求め、又は業務及び財産の状況の調査をすることができるが、子会社は、正当な理由があるときは、同項の報告又は調査を拒むことができる(381条3項・4項)。

定款の定めによる監査範囲の限定

なお、公開会社でない会社(非公開会社)であって、さらに監査役会会計監査人を設置していない会社においては、定款で定めることによって監査役の権限を会計監査に限定することもできる(389条1項
商法特例法においては、小会社(資本金が1億円以下の株式会社をさす)においてそもそも業務内容についての監査権限がなく会計監査権限しかもたない(旧商特法25条)としていたが、会社法では会社の規模で一律に規定するのではなく非公開会社について任意で限定できるとした。)。
この場合は、381条から386条までの規定は、適用されない(389条7項)。

監査役の権限を会計監査に限定している会社は、監査役設置会社の定義に当たらない。

なお、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律53条により2006年4月30日以前に設立された株式会社で公開会社には当たらない旧商法特例法による小会社に該当する株式会社には、特に定款の定めがなくても監査役の権限について会計監査に限定する旨の定款の定めがあるものとみなされる。

監査の方法・職務・権限

会社・取締役等との間の訴における会社の代表

損害賠償責任

監査役は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う(423条)。

監査役の現実

以上のように度重なる改正によって付与された様々な権限と強固な地位にも関わらず、監査役制度は現実にはあまり機能していないといわれる{{要出典}}。その原因は以下である{{要出典}}。

まず、監査役が取締役(会)から「尊敬」されていないことがあげられる{{要出典}}。監査役は、退任した取締役が「最後の花道」として就任する場合が多い(いわゆる横滑り監査役){{要出典}}。そのため、かつての上司や部下(すなわち「仲間」)を監査する事になる{{要出典}}。その上、年功序列の最終段階に「取締役」を位置づけるという日本企業独特の体制{{要出典}}の下では、筆頭の代表取締役(社長など)へは意見し辛い環境、すなわち上下関係が維持されたままである{{要出典}}。よって監査には実効性が期待できない{{要出典}}。また監査役は株主総会で選任されるものの、それは取締役会の指名に基づくのが通例であり{{要出典}}、取締役会について否定的な人間が監査役となることはまずない{{要出典}}(もっともこれらの点は取締役会による監査にも当てはまる{{要出典}}問題でもある)。これらの指摘{{要出典}}を受けて旧商法特例法上の大会社においては社外監査役制度や非常勤監査役制度が導入されたこともある{{要出典}}が、実際に業務に携わっていない者や業務内容を把握しない部外者による監査はそもそも限界があるといわれる{{要出典}}。

監査役はこのような構造的な意味での機能不全に陥っており{{要出典}}(それを揶揄して「閑散役」などといわれる{{要出典}})、こうした状況が社外取締役制度や委員会設置会社制度の導入、さらには株主代表訴訟の強化や公益通報者保護法の成立の契機にもなった{{要出典}}。

ドイツ

ドイツの監査役

ドイツの株式会社(AG)におけるAufsichtsrat(単複同形)の訳語は監査役会、およびその構成員である監査役である。しかしながら日本の監査役とは全く異なる機関で、労使双方から選ばれた代表により構成されており、その職務は経営の基本方針を決定し、会社を運営するVorstand(取締役)を任免・監督することである。労働組合の代表がメンバーとなっているのが大きな特徴の一つであり、ドイツ労資協調体制を象徴するものであると言われることもある{{要出典}}。

しかし実際は日本と同様{{要出典}}に経営陣(ドイツではVorstand、日本で言うところの取締役)が主導権を握っている{{要出典}}。ドイツではこの監査役会を置くことを嫌って有限会社(GmbH)の形態が多用されており{{要出典}}、有限会社でありながら大規模・多国籍企業であるという会社もある。

脚注

関連項目

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Category:会社法
Category:企業の役職名



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